挙式から戻ったその夜、ジンバランのイカン・バカール・ビーチに軒を列ねる漁村の屋台へ皆でいった。屋台が見え煙突から立ち上る煙りやコークの看板などを見ていると、映画ブレードランナーでも見ているような近未来的な歓喜した。
 日本の海の家を連想させるそのたたずまいは、今日一日緊張感をじゅうぶん癒してくれるだけの懐の広さがあった。数ある屋台の中から評判がいいという”ラ−マ・ヤーナ”という屋台に入ると、たくさんのテーブルが並ぶビーチのすぐそばに広大な海が広がっており、その海を染めるように美しい夕焼けが天空をおおっていた。
 その瞬間を逃すまいとシャッターを切っていると、Sさんが「来て良かったです!」「挙式も良かったし、まさかこんなにいい場所に来れるなんて思いませんでした」と感激しているのを聞いて嬉しくなった。僕自身も挙式が何ごともなく無事に終わって肩の荷がおりていたこともあり、とても晴れやかな気持ちになっていたのでそのひとことに凄く感激した。
 料理もことのほか美味しく、特に店内にある水槽から生きた魚を選び皆で「旨い!旨い!」と感性をあげながら食べたことが忘れられない。そして一時間ほどたってすっかり陽も落ちた頃、現地のバンドの生演奏を僕たちのためにOさんが呼んでくれてた。
 ビートルズナンバーや日本の”上を向いて歩こう”などいろいろ演奏してくれたが、最後にジョン・レノンの”スタンド・バイ・ミ−”を演奏中、何故かOさんがウッドベースの人に変わり演奏のまねをして笑わせると、今度は僕にベースを弾けとバンドの人から注文が入りウッドベースを皆の前で弾いたりしながら、イカン・バカール・ビーチの夜はてつもなくファンキーに終わろうとしていた。