中学時代の三年間はロックを聴くこと、エレキギターを弾くこと、髪を伸ばすことが不良といわれていた時代だった。日本でもようやくエレキブームからグループサウンズが流行りはじめ、多くのバンドが歌謡音楽を塗り替えて行った。雑誌でしか見ることの出来なかった海外のバンドも、”ビートポップス”といった音楽番組が出来てようやくテレビで紹介されるようになった。現在ではバンドのビデオクリップなど珍しくもないが、その頃衝撃的だったのはマーク・ボランのバンドT・REXが画面に映ったことだ。スタジオライブだったそのシーンは生演奏ではなかったが動いている映像に感動していた。
 後に同年代のピーター・バラカン氏を撮影した折り何気なく音楽の話をしていて「はじめてテレビで見たのがT・REXだったんですよ!」と切り出すと、「そうなんですか!僕もイギリスにいてはじめてテレビで見たバンドはT・REXでした!」という返事がかえって来てびっくりした。本家のイギリスでさえそんな状況だったというのだから、今にくらべマスメディアの発達状況は同じくらいのレベルだったのだろう。こうした時代を知らない世代には信じられないことだろうが、家の部屋でアンプを通してエレキギターを弾いていると、近所の誰かが学校に通報し風規の先生が家まで来て頭ごなしに怒られたり、ちょっとでも成績が下がると「エレキギターを取り上げあるぞ!」などとよくいわれた。
 それは髪も同様で、長いといっても耳にちょっとかかるくらい伸ばしただけで「色気づきやがって、そんなトッポイ髪早く切れ!」と髪を引っぱれてほとんど強制的に短くすることを強制されたりした。今学校の先生がこんなことをすればあっという間に事件になってしまうだろうが、髪を引っ張るくらいならまだしも往復ビンタやげんこつで殴ぐられることは日常茶飯事で、殴られて歯が折れたり頬を切ったりということもよくあった。その頃の担任野O先生は、親より怖い存在だったといっても過言ではない。